The 12th International Conference on Animal-Computer Interaction (以下、ACI2025)は、2025年12月1日から4日にかけて、米国インディアナ州のインディアナ大学Bloomington校にて、ハイブリッド形式で開催された。本学会は、工学や動物行動学、動物福祉学、デザイン学、認知科学者など、様々な分野の研究者が集まる。学会の規模は小さく現地参加は30人程度で、キーノート講演3件、口頭発表20件、ポスター発表約10件、そのた招待講演1件、ワークショップ2件のプログラムであった。筆者自身は、animal-robot interactionのIdeatingワークショップの企画者として、参加した。

 

インディアナ大学では認知科学と情報科学のダブルメジャーを専攻する学生も多く、初日はHRI研究室と乳幼児・霊長類・イヌの比較認知科学の研究室のラボツアーが開催された。また、現在はインディアナポリス動物園との協力で学部からACIがマイナー専攻として用意されており、Local ChairのChristena Nippert-Eng博士からの案内と意見交換の時間がとられた。招待講演でも「ACI研究者が動物園と共同研究する際に知っておくべきこと」について学生のインターンシップを念頭に説明がされた。

 

キーノート講演1件目は、Erica Cartmill博士による比較認知科学への技術の応用例紹介であった。イヌや霊長類の認知科学の研究へのタッチスクリーン、アイトラッキング、Thermal imagingの利用例が紹介された。2件目は、インディアナポリス動物園のChristopher Flynn Martin博士による「Functional Naturalism」の講演であった。Martin博士は京都大学の旧霊長研で博士号を取得しており、旧霊長研で認知科学研究に使われていたタッチスクリーンのゲームを動物園にも設置している。タッチスクリーンは野生下では触れない物だが、機能として霊長類の生活サイクルが野生下のような活発さになり、これを「Functional Naturalism」として動物園の環境エンリッチメントを考える際に重要視しているとのことだった。

 

3件目はインディアナ州天然資源局のJoe Caudell博士による、シカの個体数管理のためのモニタリング例と一般市民とのコミュニケーションABT(AgreementとContradiction、Consequence)についての講演であった。

 

3日目はインディアナポリス動物園へ移動し朝に動物園ツアーと午後にワークショップが開催された。一般来園者は午後2時からの入園であり、なんと貸し切り状態で動物園に所属する研究者に案内してもらうという豪華ツアーであった。動物園ツアーでは、動物園長のRob Shumaker博士の講演後、ゾウの運動不足解消ヨガトレーニング(ゾウに触れることができた)、イルカ舎、オランウータン舎、霊長類認知科学研究センターを見学した。

 

ACI2025は動物関係の研究者と情報科学や工学の研究者のネットワーキングに適しているようなアットホームな雰囲気の学会であり、口頭発表以外のプログラム内容からもネットワーキングの機会提供を強く打ち出していることが感じ取られた。なお、ACI2026は2026年12月2~4日に、北西スイス応用科学芸術大学(FHNW)ビジネススクールにて開催される。

北海道大学大学院情報科学院 春日 遥

 

インディアナ大学Bloomington校のキャンパスの様子の写真。石灰岩製の歴史的建造物が立ち並ぶ美しいキャンパスが有名だそう。

図1 インディアナ大学Bloomington校のキャンパスの様子。石灰岩製の歴史的建造物が立ち並ぶ美しいキャンパスが有名だそう。

 

3枚の写真が1枚になった画像。貸し切り動物園ツアーの入り口(左)と運動不足解消のためのヨガトレーニング中のゾウ(右上)、飼育員の許可のもとゾウに触れる学会参加者の様子(右下)。楽しそう。

図2 貸し切り動物園ツアーの入り口(左)と運動不足解消のためのヨガトレーニング中のゾウ(右上)、飼育員の許可のもとゾウに触れる学会参加者の様子(右下)

 

2枚の写真が左右に並んでいる。左側の写真では、チンパンジーが自由に部屋を行き来きしながら気まぐれにタッチスクリーンでゲームをする部屋と、来園者が同じゲームを試すことができるタッチスクリーンが向かい合わせに配置されている様子が写っている。右側の写真は神経衰弱ゲームをするチンパンジーの様子。

図3 チンパンジーが自由に部屋を行き来きしながら気まぐれにタッチスクリーンでゲームをする部屋と、来園者が同じゲームを試すことができるタッチスクリーンが向かい合わせに配置されている様子(左)と、神経衰弱ゲームをするチンパンジーの様子(右)

 

写真。懇親会にて、インディアナポリス動物園のChristopher Flynn Martin博士と自身のAIBOを抱いた筆者が写っている。

図4 懇親会にて、インディアナポリス動物園のChristopher Flynn Martin博士と筆者および筆者のAIBO