UIST 2025(The ACM Symposium on User Interface Software and Technology 2025)は,2025年9月29日から10月1日にかけて韓国・釜山(Busan)で開催された.今年は対面形式での実施となり,論文発表とポスター発表のほか,インダストリーセッションやデモセッション,ドクターシンポジウムなど多様なプログラムが行われた.
論文発表は3,455件の投稿があり,そのうち210件が採択された(採択率22.2%).これらの論文は,5大陸24か国の291機関から1,026名の著者によって寄稿された.またポスター発表は251件の提出があり,前年から大幅に増加した(+192%).採択件数は110件,採択率は43.8%(前年52.3%)であった.
オープニングキーノートでは,AIと社会・倫理の関係が主題となり,グローバルデータの活用と人間中心設計の両立に向けた視点が提示された.閉会キーノートでは,生命と人工知能の間に存在する「目的意識」や「内発的動機」の差異に焦点を当て,AIのデザインにおける新たな哲学的課題が論じられた.
デモセッションでは,研究成果として実際に動作するインタラクティブデバイスの展示が行われ,体験を通じて研究者と直接議論できる場となっていた.インダストリーセッションではスポンサー企業による技術紹介やインターンシップ案内が行われ,アカデミアと産業界の交流を促進していた.また,会期中にはコーヒーブレイクを通じた参加者同士のネットワーキングの機会も設けられ,活発な交流が行われた.
筆者自身はポスター発表として参加した.英語による応対は難しかったが,発表以外にもコーヒーブレイクの時間に他の学生や研究者と話す機会があり,国際的な研究交流において英語でのコミュニケーション能力の重要性を強く実感した.一方で,発表の際には自身の研究の目的や今後の展開に対して肯定的な評価を得ることができ,研究の方向性が適切であることを確認する良い機会となった.
本会議全体を通じ,UI技術における最新の研究成果のみならず,AI倫理や人間中心の設計思想といった社会的テーマにも強い関心が寄せられていたことが印象的であった.
関西大学大学院 永原恵太

図1. 論文発表の様子

図2. ポスター発表の様子

図3. デモセッションの様子

図4. コーヒーブレイクの様子