今回は前回お茶を濁してスルーしてしまったテーマ「国際性とは何か」ということについて考えていきたいと思います。なんなんだよ、国際性。

 

まずは、私の「国際性の高い研究者のイメージ」を書かせてください。国際性の高い研究者は、修士課程の頃からそれなりにエッジの効いた研究をしていて、若くして学会で目立ち始め、学振DC1(注1)をとり、期待通りの成果を国内で示しつつ、英語で論文を書き、博士後期課程をちゃんと3年以内に修了して学位を取り、そのまま2回目の学振(今度は学振PD)をとって海外の有名ラボへ移籍し、そこでも業績を上げて学振期間を終えても向こうのグラントで雇用され、数年後に日本に帰国し、大学の准教授として着任し、その後の大きな学会の特別講演かなにかで元ボス(海外の大学の著名な研究者)を招いて講演してもらい、その講演で同時通訳の役目を担うような人、です。

 

注1)日本学術振興会特別研究員という制度。略して学振。端的にいうと、国からお金をもらいながら博士課程に在学できる。しかも個人研究費までつく。大きく分けてDC1、DC2、PD、RPDの4種類あり、DCはドクターコース、PDはポストドクターの略である。申請者の次年度の学年及び博士号の有無によって申請コースが変わる。返還不要のお金が貰えて研究費までつく。当然、そんなうまい話が誰にでもあるわけはなく、かなり大変な書類審査によって研究実績ベースで選抜される。学振はいわゆる研究者の登竜門的存在。特に博士課程の在学者にとって「学振」はピリつくキーワードである。学振をとると学会発表時のポスターに日本学術振興会のロゴマークを入れたくなるが、同年代の不要な嫉妬を買わなように、欄外に小さく学振の研究費をもらっていることに対する謝辞を書くに留める人もいる。なお、いま活躍している研究者の中には学振経験者でない人もかなりたくさんいるので、学振に選ばれなかったから研究者として実力不足なんだ、と嘆く必要は全くない。私の観測では、手を替え品を替え工夫しながら自分の研究テーマをもって粘り強く研究をし続けている人の成功率(就職獲得率及びその後の活躍率)が高いように思う。今後は安心してピリついて欲しい。

 

と、こんな感じのイメージの人が「国際性の高い研究者」なんです、という話を何人かの年上の先生方にさせていただいたところ、「君はそんな狭い視野で国際性をとらえているの…?(大意)」というレスポンスを異口同音にいただきました。すみません。私の認識が初手から歪んでいたようです。

改めて国際性とは何か考えてみたいと思います。少なくとも、次の2つの要素が必要だと思っています。

  • 世界で通用する言語能力(実質的に英語を使いこなす能力)。
  • 世界で評価される研究能力(自分の研究成果を他国でも適用できるように議論できる能力)。

 

この二つの能力をどうやって伸ばしていけるのか、ということをこの連載を通じて書いていけたらいいなと思っています。この連載を始めるにあたって、自分だけがこのコラムを書いて、自分だけが満足する、という事態になるべくならないようにしたいです。

単純に自分が考えていることを書くのではなく、チャレンジし、体験し、そこから学んだことをここでシェアし、それが読者にとっても役立つようなそういう連載にしようと思います。

 

今回の国際度 :★☆☆☆☆
今回の勘違い度:★★★★☆