ヒューマンインタフェース学会の品位を落とさずに自由なコラムを書く。できれば、非学会員の皆様にも読んでいただき、ヒューマンインタフェース学会のことを知ってもらう。よく考えてみたらこれはなかなかの無理難題ですよ。

 

私が英語を苦手としていることは、このコラムの愛読者の皆様であれば、十分ご存じのことと思います。ご存じなかったのであれば愛読者ではない!(背反)

 

英語が苦手であると、金沢工業大学の山本知仁先生に相談したところ、次のような助言をいただきました。

 

「英語だけじゃなくて、いろんな別の言葉を学んでみるといいかもしれませんね。他の国の言葉とか、プログラミング言語とか」

 

試練すぎん? 

遠回りにも程がありすぎん?

 

英語を学ぶために、他の言葉を学ぶ。なんというか……近づこうとすれば、遠くに行ってしまう感じがしますね。それはまるで、蜃気楼のように…。

 

そんなわけで、今回はおとなり韓国のハングルについて調べてみました。なぜかって?それは、私が完全なるプライベート旅行で韓国に行こうと思っているからです。プライベートな機会を使ってまでヒューマンインタフェース学会に尽くす漢(おとこ)、それが私です。セイヤッ!

 

ハングルというのは朝鮮・韓国語というわけではなくて、文字の名称ですね。日本語で言うところの「ひらがな」とか「カタカナ」に相当するものです。

 

ダメじゃん?文字じゃなくて「言葉」を学ばないとダメじゃん?

 

……と思うじゃん?

ま、学び方は自由なんでね。学んだことは誰にも奪われないんでね。好きにやらせてもらいますよ。

 

で、何冊か本を手に取りました。そして読みました。そのなかで、大変に面白かった本を紹介しますね。

 

「ハングルの誕生 −音から文字を創る−」 野間秀樹 著 平凡社新書 2010年

 

です。これはハングルの本というか、ハングルがどのように誕生したか、どういうものなのか、ということを解説した言語学の本です。文字というのはインタフェースなんですよね。この文字というインタフェースがどのように機能するように作られているか、日本語や中国語や英語とどういう点で共通し、どういう点で異なるのか、といったことについて、非常にわかりやすく論理的に説明されています。

 

言語=民族=国家 みたいな理解がいかに幻想で、それぞれが対応していないというケースの方が多いということ。言葉はすべからく個に属するものであり、親と子さえ言語は異なりうるということ。

 

言語と文字は異なった存在であり、ことばはまず「話されるもの」として存在すること。言語数は膨大にあるのに、用いられる文字体系は数百しかないこと(例:関東弁と関西弁は異なるが、文字は同じ)。

 

一般的に、ことばが意味を伝える道具であり、言葉はコミュニケーションの道具と考えられているけれど、実際の文脈のなかでは、あることばを発しても通じるとは限らないということ。つまり、言葉があらかじめ「意味をもっていて」、それをやりとりするという構図なのではなく、言葉がそれぞれの人にあって「意味となる」ということ(同様に「意味とならない」場合も存在する)。

 

など、言葉というものを俯瞰的に見て考える良い機会になりました。

 

こうやってみると、日本語を含めいろんな言葉の構造というのは共通する部分と異なる部分があり、なぜ共通する/異なるのか、どこが共通する/異なるのか、などと考えると私が苦手としている英語というものへの見方が変わったように思います。

 

名作マンガ「将太の寿司」で、主人公の関口将太が親方のヒントになかなか気づかなかったものの、ここ一番のシーンで「そうか、そういうことだったのか!」と気づくシーンがありますが、私もあの感じと同じノリで「山本先生が言っていたのはこのことだったのか!」と気づくことができました。

 

マンガ将太の寿司で親方のヒントで何かに気づく主人公の関口将太のイラスト

 

それにしてもこの本、かなり面白くて勉強になったのですが、いま後半を読んでいて焦り出してきました。

 

こういうハングルの成り立ちを勉強するよりも、まず先に「これいくらですか?」「これが欲しいです」「トイレはどこですか?」的なフレーズを覚える方が先なのではないか?と。

 

ちょっとこの本は置いておいて先に旅行に役立つワードを調べてみていいでか?誰に許可を求めてるのかわかりませんが。それだけ私が焦っているということです。

 

こういうときには、最低限知っておくと便利な言葉をまず調べます。

 

まず初めに、マジックワード。ともかくマジックワードは大切です。これを知って使えるかどうかでコミュニケーションが変わります。きっと韓国語でも同じなはず。マジックワード、それはつまり「〜(して)ください」であり、英語でいうところの「Please」です。丁寧感を出す言葉、これこそが重要。コミュニケーションの基本、それは相手へのリスペクトです。英語の会話でもプリーズつけるかどうかで明らかに扱われ方変りますからね。

 

で、調べてみたら「〜(して)ください」は「〜세요(セヨ)」でした。

 

続いて、私が使いそうな言葉をピックアップします。そんなに大量に覚えられないですからね。最低限のところから始めたいと思います。とりあえず私がピックアップしたのは、次の7つです。

 

・これは韓国語で何と言いますか?

・これはいくらですか?

・これが欲しいです

・トイレはどこですか?

・助けてください

・ここに行きたいです

・いらないです

 

なぜ7個なのか?それは人間が一度に覚えられる情報は7±2 チャンクくらいと言われてるからです。

 

心理学界隈では知らない人はいないであろうジョージ・ミラーの論文、

Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information. Psychological Review, 63(2), 81–97. https://doi.org/10.1037/h0043158

なんと被引用数41737回。オニです。

 

まあ本当のところ、私が7個を挙げた理由は適当で、本当は7±2関係ないです。7±2と言いたかっただけです。

ちなみに、近年の記憶研究では、コーワンが2001年に提唱した、短期記憶が一度に扱えるのは4±1チャンクである、というものの方がよく引用されます。

Cowan N. The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences. 2001;24(1):87-114. doi:10.1017/S0140525X01003922 

こちらは被引用回数10222回。でもまあミラーに比べれば小オニです。嘘です。充分オニです。

 

いかんいかん。引用回数の話で自分を見失ってしまいました。私が言いたいのは7つの韓国語のフレーズでした。

 

というわけで生成AIの力を借りて、7つを翻訳してもらいます。

 

これは韓国語で何と言いますか?

이거 한국어로 뭐라고 해요?

イゴ ハングゴロ ムォラゴ ヘヨ?

 

これはいくらですか?

이거 얼마예요?

イゴ オルマエヨ?

 

これが欲しいです

이거 주세요.

イゴ ジュセヨ

 

トイレはどこですか?

화장실 어디예요?

ファジャンシル オディエヨ?

 

助けてください

도와주세요.

トワジュセヨ

 

ここに行きたいです

여기 가고 싶어요.

ヨギ カゴ シポヨ

地図やスマホを見せながら言うなら、もっと自然なのは

여기 가 주세요.

ヨギ カ ジュセヨ

=ここまでお願いします

タクシーなどで特によく使います。

 

いらないです

괜찮아요.

クェンチャナヨ

 

なるほど。てか、「〜세요(セヨ)」どこいった?

いや、ちゃんとつけてくれてるやつもあるけど。

 

こうやってみると、

・これ = 이거 = イゴ

・ここ = 여기 = ヨギ

なんだなぁ、なんてわかったりしてきました。

 

でも、皆さんもおそらく薄っすら気づいてますよね?

 

勉強の仕方をミスってる、と。

 

私もね、なんとなくはわかってたんですよ。でも、引き返せないときってあるじゃないですか。失敗するのわかってて、その失敗も込み込みでちょっと面白くなってくるときってあるじゃないですか。アニメ、ドラゴンボールで孫悟空が「オラわくわくすっぞ」というときはこういう気持ちなのかもしれません。

 

あかん。完全に見失ってきた。ゴールを決めずに書き始めて、終わり方がわからなくなって尻切れトンボで終わる。大学1年生がよくやるダメなレポートのパターンです。

 

 

とりあえずピノを食べて落ち着きを取り戻しました。何が言いたかったかというと、言葉というものを相対化し、俯瞰的に見ることは、国際社会において自分の立ち位置を相対化してみることにつながる、ということです。山本先生がここまでのことを私に伝えようとされていたかどうかはわかりませんが、少なくとも私の勉強方法がミスっているということはわかりました。

 

次回は韓国レポートをしようかなと思います。それでは、アンニョン。

 

マンガ「将太の寿司」の鳳寿司の親方が「ミスってるぞ!」と言っている架空のシーンのイラスト

 

国際化度:★☆☆☆☆
旅の不安度:★★★★☆
将太の寿司:★★★★★