倉本 到(福知山公立大学)
言葉は人と人との間をつなぐ重要なコミュニケーションツールである,ということはこのエッセイを読まれる方からすれば「いまさら何を」という感じではないかと思いますが,わたし個人はここ最近の言葉の変容っぷりに追いつけていません.直近で最も印象的だった言葉が「対よろ」です.
対よろ?
よろ,はたぶん「よろしく」の省略形だよな? 対ってなんだ? 対面? いやでもこれネットスラングだよな? 対象? よろしく言ってるんだから対象は相手に決まってるよな? どういうこと? そもそもなんて読むのこれ? ついよろ?
…というわけで娘(高校生)に確認してみたところ「対戦よろしくお願いします」の略らしいことが分かりました.用法としては,普通の挨拶に加えて,これから私が主導した会話(あるいは作業)が始まるので覚悟をしてください,というニュアンスも含んでいるようです.なるほど,これからお前とやり取りするぞ,という気持ちを込めて対戦なのか….
もともとは「対あり(対戦ありがとうございました)」が先にあった言葉で,対戦型のネットゲームのチャットや,対戦ゲームの実況中継動画で使用されていた挨拶です.ゲームの対戦でも(では)礼儀を重んじるコミュニケーションをしているのは,なかなか今の若い子たちらしいなと思ったりします.ざっと調べた感じでは,2012年ぐらいにはすでに使われていて,このときは「投了」の意味も含まれていたようですが(当時は「ありがとうございました」に卑下的意味がニュアンスとして含まれていることも多かった記憶があります),一般的なネットコミュニケーション環境で使われるようになるにつれ卑下語としての意味は薄れてきたようです.よく使われるようになったのは2018~19年ぐらいなので,もう3年ぐらい使われているんでしょうか.
短くて語感が良い語がやはり生き残りやすいんでしょうか.「草」とかは今や通常会話でも発される一般的な言葉ですし(ホンマか?),「エモい」などもかなり市民権を得てきていますし,人は4音節以上の単語を即座に発音・理解できない生き物なのかもしれません.たぶんそんなことはないと思いますが.
以上,若い子たちとボイチャとかするといろいろと新しい発見があるなあというお話でした.
対ありです!