平岡 敏洋(日本自動車研究所)

 

このリレーエッセイの話が来たとき,正直何を書こうか迷いました.指定された分量は600~1500字程度.最初は「結構分量あるなぁ~」と思いましたが,X(旧twitter)の1ポスト(ツイート)のポスト数(ツイート数)で換算すると,1ポストあたり140文字制限なので,5~11ポスト分ということになります.そう考えると,「あれ?意外と少ないんじゃね?」と思ってしまう私はいわゆるツイ廃の部類かもしれません.

 

そんなことはさておき,何を書こうかなと考えたときに思い浮かんだのが,趣味関係か研究関係だろうなと.前者となると,25年以上一口馬主をしている競馬の話か,92年から鈴鹿で観戦しているF1の話,はたまた広く車のお話か.後者だと,長年取り組んでいる自動車に関する人間機械系の話か不便益の話でしょうか.悩みに悩んだ末に,研究にも趣味にも関係する車の話をしたいと思います(前置き長いな).

 

大学2回生だった1991年に普通免許を取得し,その直後に中古車を購入して以来,2024年6月時点で4台の愛車を乗り継いできました.

 

21~28歳:HONDA グランドシビック 25R (EF2)

3ドアHB,4AT,FF

1493cc,91ps,118.7Nm

走行距離7万kmくらい

 

28~36歳:HONDA初代シビック Type-R(EK9)

3ドアHB,5MT,FF

1595cc,185ps,160Nm

走行距離10万kmちょい

 

36~52歳:VW 5代目GOLF GTI

5ドアHB,6AT(DSG), FF

1984ccターボ,200ps,280Nm

走行距離15万kmくらい

 

52歳~:トヨタ GRカローラ RZ

5ドアHB,6MT,4WD

1618ccターボ,304ps,370Nm

走行距離6500kmくらい(購入後1年強で)

 

筆者と前愛車(左:VW GOLF V GTI)と現愛車(右:トヨタ GRカローラRZ)

筆者と前愛車(左:VW GOLF V GTI)と現愛車(右:トヨタ GRカローラRZ)

 

見事なまでに4台ともにハッチバックで,2台目と4台目がマニュアルトランスミッション(MT)車で,1台目と3台目がオートマチックトランスミッション(AT)車.ただし,3台目のGOLFはDSGと呼ばれるMTベースの自動変速機を搭載していました.

 

排気量は4台目で減りましたが,出力は単調増加.現在所有しているGRカローラは最初の愛車であるグランドシビックの3倍近い出力です.

 

私は物心がつくかつかないくらいの頃から車が大好きでして,3歳くらいのときには部屋がミニカーで溢れていたと両親から聞かされました(覚えていない(笑)).小学生の頃には漫画「サーキットの狼」を読みあさり,父親から譲り受けたオリンパスOM10を片手に田舎の街の中古車などでたまに見かけたスーパーカーの写真を撮影しては一喜一憂する…そんな子供だったので,成人してからもソコソコの車好きに育ち,上記のような車を所有してきました.ただし,峠を攻めたり,ジムカーナやサーキット走行をするような熱狂的な走り屋ではなく,ただただ車が好きというライトな感じです.

 

私は運転支援システム (ADAS: Advanced Driver-Assistance System) の研究を長年行っていますが,一つ前の愛車にはACC (Adaptive Cruise Control)もAEBS(Advanced Emergency Braking System: 衝突被害軽減ブレーキ)も装着されていませんでした.ところが,17年ぶりに昨年購入した車には以下のようなシステムなどが装備されています.

 

  • プリクラッシュセーフティ(衝突被害軽減ブレーキ)
  • レーダークルーズコントロール(いわゆるACC)
  • レーントレーシングアシスト(いわゆるLKAS(車線維持支援システム))
  • レーンデパーチャーアラート(車線逸脱警報)
  • ロードサインアシスト(自動で交通標識を認識し,インパネ内に表示する)
  • 発進遅れ告知機能:先行車の発進や青信号になったときに出遅れ防止を支援
  • リアクロストラフィックアラート(後方から接近してくる車両を検知して警報提示)
  • クリアランスソナー・バックソナー(側後方の静止障害物を検知して警報提示)
  • ブラインドスポットモニター(車両斜め後方の死角部分に存在する車両の存在を検知して注意喚起)
  • 緊急ブレーキシグナル(急ブレーキをかけるとハザードランプが自動点滅)

 

いざ運転してみると,隔世の感がありますね~… いやぁ,先進技術てんこ盛りです.

 

高速道路を走行するときには,ACCとLKASを組み合わせて使っていますが,この2つを使うといわゆる自動運転のレベル2に相当します.自動運転のレベル2は,法的には常に周辺状況やシステムの作動状況を監視しつづけなければなりません.いわゆるアイズオンが必須となります.しかし,ATだと,うまく走っているときはほとんど操作する必要がなくなるので,眠くなる可能性が少なくありません.これまでにレンタカーなどでACC+LKASを使ったときはそうでした.それが,MT車でACC+LKASが装着されている場合だと,先行車が割り込んできて減速すると,状況によってはシフトダウンしないとなかなか思うような加速をしてくれないので,クラッチを切ったうえで,左手でシフトダウンする必要があります.ACCだけど変速は手動式.これが私にとって「ちょうどいいくらい」の操作関与度合いでして,眠くなることもありません.

 

今の世の中,自動車の運転から可能な限り人間の操作を減らして,半自動から全自動にしていこうという流れです.ドライバレスのバスやタクシーといったレベル4自動運転移動サービスなら理解できますが,中途半端なレベル2や3であれば,どの程度の自動化がいいのか?ということを真剣に考えないといけないと思っています.そういう意味では,このMT車におけるACC+LKASくらいが「ちょうどいい」の一つの目安になるのでは?なんて思い,このエッセイを書いてみました.皆さんも一度どれくらいの自動化がちょうどいいのか?を考えてみてはいかがでしょうか.なお,多種多様な運転支援機能を使う際には,システムの仕様や機能限界をしっかりと理解して,正しく使ってくださいね.過信や依存は厳禁ですよ!でも,正しく使えば,万が一のヒューマンエラーのときに助けてくれるかもしれませんし,運転負担をうまく軽減してくれるかもしれません.