渡辺富夫(岡山県立大学特任教授)
司会者: 「猫にこんばんは」で著名な言語学の権威○○先生に続いて、今回は「うなずき博士」で有名な渡辺富夫先生にお話しをお伺いします。早速ですが、「うなずき博士」と呼ばれるようになった切っ掛けはどういったことでしょうか?
渡辺: 1999年1月NHK「オモシロ学問人生『うなずきで会話がはずむ』」で紹介されてからでしょうか。最新の「うなずきロボット」とともに、その前身の「うなずきマイク」も紹介させていただきました。「うなずきマイク」は、1978年に始めた生後間もない新生児と母親との原初的コミュニケーション研究の成果で、モデル化して話すとレベルメータが点滅する、話しやすいマイクとして1983年に学位論文にも載せています。
司会者:「うなずきマイク」の反響はどうだったのでしょうか?
渡辺:原著論文には掲載されましたが、反響はありませんでした。そもそも話の中身を理解せずにうなずいてどうするんだといった意見が多かったです。でも反応があると話しやすいでしょうと応えていました。
司会者:当時はそうだったのですか。それにしても「うなずきロボット」は凄いですね。
渡辺:ありがとうございます。新たにタイミング制御による身体的引き込みモデルを再考して最高の「うなずきロボット」を紹介したときは、能書きは不要で、身体的引き込みによる一体感や共有感の重要性をまさに身体的に感じとることができました。
司会者:最後に、40年以上にわたる「うなずき」等の身体的引き込み研究の思いをお話下さい。
渡辺:これまで「思いが通い合う」システム開発のために身体的リズムの引き込みに着目し、その重要性と意義を追及してきました。バーバル情報と切っても切れないノンバーバル情報のみを用いて、コミュニケーション内容に依存せずにシステムを開発しようとしているのですから、自ずと限界があるはずで、その限界を学術的に見極めることが大変重要であると考えています。身体的リズムによる一体感・身体性の共有という基盤があってこそ心の基底の部分でやりとりできるというアプローチです。一方、タイミング制御に気を取られ、うなずき動作そのものの多様性の観点がすっぽり落ちていました。「松茸は千人の股をくぐる」という言葉通り、はっとさせられることが多く、うなずきは実に面白く、最高です。