吉田 悠(日本大学)
HI学会の『リレーエッセイ』というとても面白い企画にお声がけをいただき、せっかくの機会ですので、これまで仕事関係の方々にはほとんど話してこなかった自分の趣味について書きたいと思います。ほとばしる情熱をなるべく抑えて冷静に書くように努めますので、お付き合いいただけると嬉しいです。
私には大人になってから20年以上続けている趣味がありまして、それはクラシックバレエです。きっかけは修士2年生の頃で、当時、私は運動不足が原因で重度の肩こりと頭痛に悩まされており、何か身体を動かすことをということで、かねてから興味のあったバレエを始めました。軽い気持ちで始めたのですが、バレエのレッスンはとても面白く、完全にハマってしまいました。社会人になってからも続け、現在に至ります。バレエの面白さ、楽しさが皆さんに少しでも伝わるよう、私の考えるバレエの魅力をトピックに分けて紹介します。
〇心身ともにリフレッシュできる
これは、「普段仕事や研究で頭ばかり使っているから、何も考えずに身体を動かすとスッキリするよね~」という単純な話ではありません。なぜならバレエも他のスポーツと同様、頭をかなり使うからです。ただし、普段の仕事や研究とは異なる脳の部位を使っていると感じます。身体の動きをコントロールするため、バランスをとるために、常に重心位置や身体の使い方に意識を集中させています。身体を意図通りに動かすために頭を使い、筋肉を使い、結果、普段使わない部位の脳と筋肉を使うのでリフレッシュできる、という効果です。かなりスッキリ、爽快です。
〇脳トレができる
先のトピックに加え、バレエでは、記憶するための脳が求められます。レッスンでは、即席で与えられた振り付けをその場で覚えて踊るというのが一般的です。振り付けはその場限りで、同じ振り付けを次回以降も踊ることは殆どありません。与えられた振り付けを即座に記憶し、踊りながら常に次の振り付けを考える、というのはかなりの脳トレ効果があります。
〇フランス語が覚えられる(ただし単語のみ)
ステップ名やポーズ名等、すべてのバレエ用語はフランス語です。邦訳はもちろん、英訳すらありません。したがって、レッスン中の先生の説明に占めるフランス語の割合はかなり多くなります。バレエ用語は動きや方向などの視覚的要素と直結しているので意外に覚えやすいです(例:バ・デ・シャ(猫のステップ)、等)。ただ、単語のみで文法は皆無なので、フランス人との会話は全くできません。。。
〇旅行先(特に海外)での楽しみが広がる
先に述べた通り、バレエ用語は世界共通なので、どの国に行ってもレッスン内容が理解できます。また、レッスンメニューの構成には型がありこれも万国共通です。さらに、殆どのバレエ教室にオープンクラスという制度があり、1回のレッスン料を払えば誰でも飛び入りで参加できます。したがって、旅行先で時間を作って現地のオープンクラスを受講するということが可能です。海外のクラスは日本とは違った雰囲気があり面白く、現地の人とバレエを通して仲良くなれます。私は、フランス、オランダ、スイスのオープンクラスに参加したことがありますが、いずれもとても良い思い出です。
〇音楽の素晴らしさを再認識できる
これは意外に思われるかもしれませんが、バレエ、ひいては、ダンスの起源は音楽だといわれていることに由来します。多くのダンサーや振付家は、「ダンスとは、身体を用いて音楽を視覚的に表現することである」という共通認識を持っています。情報やデータの視覚化に興味があるHI分野の皆さんの中には、音楽を視覚的に表現する、という言葉に興味を持たれる方もいるのではないでしょうか。良い(と言われている)ダンス作品は、音楽の解釈とそれを視覚的に表現するための振り付けが秀逸です。そして、こんなにいい曲だったのか、とか、今までと全く違う曲に思える等、何気なく聴いていた音楽の別の魅力を認識するきっかけになります。興味がある方は、現代バレエですが、M.ベジャールの『ボレロ』(音楽:ボレロ by M.ラベル)を見てみてください。単調なミニマリズムの音楽が、実はスリリングで原始的な音楽だったのでは、と再発見ができると思います。
ここ5年ほど、妊娠・出産・育児でバレエをお休みしていたのですが、半年前にようやく再開しました。再開初日のレッスンは本当に楽しく、5年間バレエをせずによくやってこられたなと思ったほどでした。まさに、NO DANCE, NO LIFEです。