中澤篤志(岡山大学)
岡山に来て、今年から三年目に入ろうとしている。
もともと関西を中心にあちこちを移動してきた。学生時代は大阪で八年、その後は東京に三年。そしてまた関西に戻り、大阪に十年、京都・滋賀に十年。合計すると、かなりの時間を関西で過ごしてきたことになる。それぞれの土地で、街の空気や人の動き方に違いがあり、生活の中でそれを感じ取ってきた。
いろいろな事情で岡山に来て仕事をすることになった。岡山は未知の土地ではあったが、自分自身が瀬戸内の出身で、瀬戸内の気質や感覚には馴染みがある。たとえば、魚を見ればすぐにどこ産かわかるのが、海の近くで育った人間だと思っている。見た目や味、脂ののり具合など、地元の魚にはそれぞれ特徴がある。
岡山は大学と街との距離が近い。岡大は歴史的経緯もあって、街に近い場所にある。学生が街に出て、人と触れ、街の空気を吸いながら過ごすことは、とても得難い経験であり、街が身近にあることで日常が豊かになる。卒業後にこの街で働こうという気持ちにもつながる。学生は街を見て、そこでの暮らしをイメージしながらその後を考える。
岡山は「特徴がない」と言われることもあるが、大学で過ごしてみると、地理的にも面白い位置にあることがわかる。鉄道的には結節点であり、中国山地、日本海側、四国などからアクセスできるので、いろいろな地方から人が集まってくる。自分の研究室の構成員を見てもそれがよくわかる。最近は兵庫県出身の学生も増えてきていて、関西の延長としての岡山という顔もある。
そんなこんなで、岡山は街のサイズ感や人との距離感がおもしろいと思う。近いうちに、ぜひ岡山に足を運んでいただきたい。瀬戸内の風と街を、肌で感じてもらえたらと思う。