第220回ヒューマンインタフェース学会研究会は「ウェルビーイングのためのサービスデザイン」をテーマとして、2025年6月12日にオフライン/オンラインハイブリッド開催されました。(オフライン会場: パーソルキャリア株式会社(麻布台)、オンライン会場:Zoom Web会議サービス)。

近年、持続可能な社会の構築が求められる中で、ウェルビーイングは個人・組織・社会の価値指標として注目されています。その流れの中でサービスデザインも単なる利便性追求から脱却し、「よりよく生きる」体験の創出が求められるようになってきました。しかし、ウェルビーイングは多面的で文脈依存性が高く、サービスデザインにどう統合すべきか明確な枠組みは見当たりません。そこで、本研究会では多様な実践例を集め、得られた実践知からウェルビーイングを意識したサービスデザインの可能性を探り、国内議論の漸進を目指しました。

一般講演は、下記の7件の発表があり、活発に質疑が行われました:

1. 事業活動推進における関係者間の非対称性に着目した共創関係構築におけるルールデザインの実践考察
2. なぜ共創するのか?:リビングラボに関与する多様なステークホルダーのモチベーションの分析
3. リビングラボにおける文脈共有: 未来づくりワークショップを事例として
4. 遠隔地から関わる共創の実践:地域の魅力を活かしたサービス構想プロセス
5. 単一話者無意味語音声による雰囲気伝達の試み:リモートワーク環境での心理評価実験
6. 生みだすケアとVR~生きものをモチーフとした楽器づくりの体験から
7. Re!dea:アイデアをリサイクルするサービスのデザインおよび社会的影響の考察
最後に招待講演として、NTT上席特別研究員である渡邊淳司様から『身体性とわたしたちのウェルビーイングのデザイン』と題して、五感や身体の動きを介したコミュニケーションの事例をはじめ、ウェルビーイングに関連する様々な具体例を紹介いただきました。これにより多角的な視点からウェルビーイングの輪郭を捉え、理解を深めることができました。特に、ウェルビーイングを名詞としてとらえ目的や成果と考えるのではなく、「ウェルビーイングに~する」のように副詞として考えるという解説はサービスデザインでの実践を考えるうえで示唆的でした。
参加者はオフラインとオンラインを合わせて約60名で、ウェルビーイングについて多くの示唆が得られた研究会でした。次回の研究会は11月にハイブリッドで開催される予定です。

研究会

緒方 啓史(株式会社東芝)