伊藤 京子 (大阪大学)
高校生のときに卒業後の進路を考え、工学部に行きたいと思いました。それほど深く考えたわけではなく、「かっこいいな」と思ったのですが、親の反対もあり、薬学部に入学しました。
薬学部では、1学年が90名で、女性が3分の1程度でした。専門科目は学年全体が1つの教室で授業を受けていました。3回生の1年間は、午後はすべて必修の実習で、グループごとに実験をしました。そのために、同級生全員と話したわけではないけれど、およそ、顔は知っていました。学部全体にアットホームな雰囲気がありました。
その後、「やっぱり工学部に行きたい」と思い、縁あって、同じ大学の工学部に入学しました。工学部では、電気電子工学科でした。150名の学科で、女性は2名でした。日本人女性は6年ぶりだという風に聞きました。専門科目は「電総大」という半地下の階段状の教室で授業を受けました。同級生は、顔も名前も知らないままの人が多かったです。
結果的に、同じ大学の2つの学部にそれぞれ4年間ずつ通い、それぞれ卒業しました。同じ大学でも、学部によって随分違うものだなあ、と工学部の4年間ずっと感じていました。同じ「理系」といっても、学ぶことも、目指すことも、その先も、それぞれ違い、学部の中の関係性も異なりました。例えば、薬学部で卒業後の節目で開催された同窓会には同級生の7割程度が参加し、同級生全体を対象としたSNSグループがあり、学部時代の雰囲気が続いています。一方で、工学部で学びたいことを学べて、幸せでした。私は、工学部が好きです。
本年4月より、大学を異動し、新しくできる工学部の情報工学科に着任いたします。薬学部と工学部での経験を活かし、情報工学科のあり方を考えていきたい、そして、薬学部のようなアットホームな雰囲気をつくっていきたいと思っています。18歳の時に行きたいと思った工学部ですが、その誕生に携わることができて、とてもうれしく、そして楽しみです。