黒田 嘉宏(筑波大学 システム情報系)

 

ここ最近の米国大統領選ではフェイクニュースなどSNSの負の側面が顕在化している。正直、どの情報が本当に正しいのか全く判別がつかなくなってきた。芸能人スキャンダルもSNSの内容が公開され、深い傷になることも多い。下記の写真は、とある日の筆者のSNS画面である。熱烈なメッセージを書いているが、実態は私のいない間に娘が妻宛てに書き込んだというものである(妻は私からのメッセージではないことに気づいており「分かってるよ~」と返信している)。

 

第8回リレーエッセイ画像

 

つい先日、SNSのセキュリティ問題が日本政府も巻き込んだ大問題となった。個人的にはSNS以外にも便利系サービスに日常的に依存しすぎて、ふと不安になることがある。研究室ではSL*CKなどのビジネスツールを日常的に使用している。将来特許化できるような発明のアイデアも関係者との閉じたやり取りを前提に送ることは少なくない。関係者以外が見ていたらどうする? という疑問から目を背けている部分も正直あるのではないか。他にもGo*gleカレンダーが仮に停止したら今日、明日の予定すら分からなくなり、右往左往するだろう。Gm*il上のメールが見れなくなると全く仕事にならない(むしろ、その方が幸せかもしれないが・・・)。

 

私事ではあるが、現在はVR/HCIや医用工学の研究を行っているものの、学部の卒論テーマは情報セキュリティであった。情報セキュリティの基本的な概念として、「利便性と安全性はトレードオフ」というものがある。利便性を上げれば安全性は下がり、その逆も然りである。安全性を高めたいのであれば、am*zonで買い物はできないし、そもそもホームページすら見ることができない。他のコンピュータと接続している時点で安全性は確実に低下する。人は利便性を優先し、昨日までの常識にすがり、あらゆるリスクから目をそむける。セキュリティ管理の観点では、現状は非常にまずい状態なのだろうと思う。どこかのタイミングで、この現状の問題を突きつけられる日が来るのではないかと思っている。もし利便性と安全性をうまく両立している会員の方がおられたら個人的に何かの折に教えていただきたい。ここまで書いて、京都大学 川上浩司先生の不便益について、京都での本学会シンポジウムの特別企画にてお話を聞いたことをふと思い出した。不便なことから得られる利益、趣旨は異なるが利便性に対する警鐘という点で重なる点もあるのではないか。雑文をご容赦いただきたい。