石井 裕剛(京都大学)

 

私の研究は知的探求というより、モノづくりが多いです。プログラミングが好きで、時間を掛けてモノをつくり、動かすのが好きなのですが、その原点は鳥人間コンテストにあると思っています。

 

今年は2年ぶりに鳥人間コンテンストが開催されました。鳥人間コンテストは1977年からほぼ毎年琵琶湖で開催されている、讀賣テレビ放送主催による手作りの人力飛行機の競技会です。主に滑空機部門とプロペラ機部門があり、高さ10mのプラットフォームから、琵琶湖に向けて毎年40機程度が飛び込んでいます。昔は仮装した生身の人がプラットフォームから飛び降りる部門もあったのですが、残念ながら最近は飛行機部門だけになっています。毎年テレビ放送されていますので、御存知の方も多いと思います。

 

私も妻もバードマンで、学生の頃は京都大学の吉田寮の食堂で、寝る暇を惜しんで飛行機作りをしていました。コンテストに出場する機体は、翼幅が30m近くあるような大きなものであるにもかかわらず、0.1mm単位で拘って制作しており、30人くらいの人が1年近くの時間を費やしてやっと完成するような代物です(チームによってはもっと時間をかけているところもあります)。材料費も数百万円かかっており、学生にとっては、まさに全てを掛けた挑戦になります。ちなみに優勝賞金は100万円なので、優勝しても必ず赤字になります。

 

鳥人間コンテンスト、実は出場するだけでも簡単ではなく、事前に設計図等を提出して、安全性や話題性などが審査され、それにパスしたチームだけが出場できます。大学のサークル活動で出場している人は、今年の競技会が最後のチャンスという人もいますが、この事前審査をパスできずに、涙を呑んでそのまま引退という代もあります。それだけに、無事機体が完成し、天候にも恵まれて、綺麗なテイクオフができた時の感動は今でも忘れられません。

 

昨年度は新型コロナウイルスの影響で競技会が中止になりました。後輩たちは事前審査にパスし、多くの時間とお金をかけて飛行機を作り続けていました。それがプラットフォームに立つことすらできず、そのまま引退となりました。頑張って作ったモノが動く楽しさや感動を経験することができなかった。たとえ2秒で墜落していたとしても、その悔しさからであれば、学べる事が多かったに違いありません。

 

ワクチン接種が進んでいるにも関わらず、第4波、第5波の感染の波が来ており、先が見通せない状況が続いていますが、1日でも早く収束し、仲間と一緒に気兼ねなくモノつくりが楽しめる世界が戻ってきて欲しいと願っています。

 

機体を人力で引っ張る試験飛行。右端が筆者。

機体を人力で引っ張る試験飛行。右端が筆者。

 

京大時計台前での試験組立。

京大時計台前での試験組立。

 

プラットフォームに向かう機体。

プラットフォームに向かう機体。