三浦直樹(東北工業大学)

 

今回リレーエッセイ執筆のお話をいただきまして、自分の研究へのモチベーションを少し振り返ってみました。

 

下手の横好きという諺があります。下手なのに熱心に取り組む様子といったように、この諺を持ち出す場合は、どちらかというとネガティブな意図を持たせることが多いと思われます。ですが、それは本当に悪いことでしょうか?

 

私はスポーツが大好きですが、自分でやるとあまり上手くありません。ゲームも好きですが、決して得意とは言えません。まさに下手の横好きを地でいっています。

 

研究に話を移すと、私の専門分野は認知神経科学であり、ヒトの社会性、すなわちコミュニケーションに関係する認知機序を主たる研究対象の一つとしています。しかしながら私自身は対人コミュニケーションがとても苦手です。他者に視線を向けること、それから他者の視線が自分に向けられることに対して、強い苦手意識があります。大学では講義を受け持っていますが、新しい学生を相手にするときにはいまだに緊張の汗が止まりません。しかも最近は、講義の自動収録・配信システムが学内で運用されており、自分の姿が記録され学生に見られていると考えると、とても憂鬱な気持ちになります。

 

なぜそんなに苦手なコミュニケーションを研究対象に選んだか改めて考えてみると、自分が苦手なこと・出来ないことを理解したいという気持ちがあるからだと思います。開始地点は劣等感かもしれませんが、コミュニケーションを苦にしない、いわゆるコミュ力の高い人には気づかない点を見つけることも出来るのではと、勝手に考えています。とはいえ、もし良い研究成果を上げることができたとしても、私自身の対人苦手意識はそう変わらないでしょう。まさに下手の横好き?な状態が続くと考えられます。それでも、もしかしたらその成果が誰かの役に立つかもしれません。

 

そう考えると、たとえ下手でも好きなこと・興味があることに取り組むことは、悪くないのではと思います。自分の中ではそう信じ、研究においても下手なりの努力をしていけたらと考えています。

 

学科セミナーでの研究室紹介風景:大人数の前で話すことは本当に緊張します

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