ホップ・ステップ・ジャンプ
ヒューマンインタフェース学会会長 藤田 欣也
ヒューマンインタフェース学会(以下、HI学会)として初めて遠隔参加を併用することになった3月6日開催の総会で、下田前会長から会長を引き継ぎました。新型コロナウィルスの流行という外的要因がきっかけとはいえ、お互いの顔を見て時には談笑しながら、何の問題も無く総会後の授賞式まで遠隔で執り行われたことには、隔世の感を禁じ得ませんでした。
昨年のHI2019での学会設立20周年企画は会員の皆様のご記憶に新しいところだと思いますが、1999年1月の学会設立から数えて、はや22年目に入りました。10年前の学会誌を見てみると、当時の土井会長が「前例の踏襲から改革へ」と題して巻頭言を書かれています。その後、歴代会長のもと、論文誌は完全オンラインのオープンアクセス化が進み、学会誌は商業誌に見劣りしないフルカラー版に衣替えしました。学会HPも刷新作業が着々と進められています。関係者の皆様に心から敬意を表します。
HI学会のこれまでの20年を振り返ってみると、最初の10年ではインターネットの普及でインタフェースへの要求が多様化する最中に学会組織を立ち上げ、次の10年ではスマートフォンが生活必需品になった情報化社会と歩調を合わせるように改革を進め、そうして今、IoTやAIが社会に浸透して機械と人の知能がダイナミックに融合する次の10年を迎えようとしています。そう、HI学会は、まさに今、立ち上げのホップ、改革のステップの次、飛躍のジャンプを迎えようとしています。
さて、そうすると、人と機械の接点を専門とする研究者や技術者のコミュニティとしてのHI学会にとってのジャンプは何でしょうか。答えはわかりませんが、ひょっとしたら、従来のHI学会ではメインストリームで扱ってこなかった産業や学術領域との連携なのかもしれません。人と機械/情報の接点を改善することによってプラスの効果 が得られる領域は、本来、とても大きな 広がりを 持っているはずです。
また、アカデミックコミュニティである以上、学術的な知見を磨き上げる議論の 場や、得られた知見をアーカイブする場としての機能は欠かせないでしょう。そうすると、シンポジウムや研究会のあり方も、 大胆に見 直す時期に来たということかもしれません。シンポジウムは、HI2019でのアンケート結果 を反映して、今年から発表形態 を議論中心にシフトしていく予定です。HI学会らしさの源泉 である研究会も、専門研究委員会(SIG)を中心とする運営体制になってから10年を超えました。既にステップアップキャンプのようにSIG横断的な新しい取り組みが始まっていますが、より一層の活性化策を考えたいところです。論文誌の完全オンライン化・オープンアクセス化の次は、投稿数増による活性化ですが、一方でアカ デミズムのグローバル化は あらがえない流れです。そのような中、HI学会の立ち位置 をどこに 持っていくか、英文論文誌の可能性など含め、これから会員の皆様のご意見を広く募りながら一緒に考えたいと思います。
景気の良い話の一方 で、これからの研究者人口の減少に対応可能な学会の運営体制も構築していく必要があります。そのためには、各種情報システムの大胆な活用も積極的に検討すべきと考えています。
30周年を迎えた時さらに元気なHI学会になっていられるように、会員・事務局の皆様と一緒に活動を盛り上げていきたいと考えています。皆様のご支援とご鞭撻をいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。